
再雇用で生じる逆転現象とは?上司と部下の気持ちを整理
「中年社員のマンネリ化を対策」
「再雇用による上司と部下の逆転」
「再雇用制度の注意事項」
年金受給者の対象年齢の引き上げなどから、企業にも再雇用の積極的な活用が努力義務とされています。しかし、再雇用となった社員は職場での立場に悩まされることも多いと言われます。今までは上司であった人が今後は部下になることによって上司と部下の立場が逆転してしまうのです。
それは、能力による立場の逆転ではありません。単純に、再雇用という仕組みによって立場が逆転するのであって、仕事ができるかできないかという基準でないところも人間関係を複雑にしてしまう要素の一つでしょう。
長く同じ会社で働き続けると仕事がマンネリとなることもありますが、少し先の将来を見据えると他人ごとではないことが分かってきます。ここでは、仕事へのマンネリ対策と再雇用制度について書いてありますので、参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.中年社員のマンネリ化を対策
- 1.1.未来へのシミュレーション
- 1.2.間近に迫る再雇用
- 2.再雇用制度への葛藤
- 2.1.社会制度の問題が再雇用制度を選択させることも
- 2.2.葛藤からの再雇用
- 3.再雇用による上司と部下の逆転
- 3.1.新しい上司が気を付けるべきこと
- 3.2.新しい部下が気を付けるべきこと
- 4.再雇用制度の注意事項
- 4.1.労働条件に関する注意
- 4.2.賃金に関する注意
- 4.3.有給休暇や手当に関する注意
- 4.4.契約期間に関する注意
- 5.まとめ:再雇用制度についての理解を深めることが大切
中年社員のマンネリ化を対策
同じ会社で長く働いていると、一定の役職になり、仕事も難なく行うことができるようになります。それゆえ、成長を自分で止めてしまい、若手の時のような緊張感をもって仕事に取り組んでいる人は少ないのではないでしょうか。何事もない平凡に満足を感じている方も多いことでしょう。
しかし、仕事をする上で、マンネリ化は禁物です。マンネリ化防止のための時間への意識を見ていきます。
未来へのシミュレーション
マンネリ化している社員には未来へのシミュレーションを行ってもらうようにしましょう。自分の人生設計から残された時間の感覚を持ってもらうのです。
40歳ぐらいの中年の社員であれば、入社してからおそらく20年近くの年月が経っているでしょう。残されている時間は思っているほど長くはなく、家庭を持っている社員であれば、家族がその先どのような状態であるかも心配になるはずです。
子どもがいれば、子どもも年齢を重ねればその分だけかかるお金も増えてきます。今のままではいけないという感覚をどれだけ現実味を帯びて考えてもらえるかがマンネリ化の防止につながります。
間近に迫る再雇用
家族だけではありません。自分自身の人生設計においてもよく考える必要が出てきます。自分の健康状態を気にすることもそうですが、自分の貯蓄が老後に備えて安心できるものであるか、自分はいつまでこの会社で働くことができるのかを考え始めることになります。
厚生労働省は企業に対して再雇用制度を義務付けていますが、自分が勤めている会社では再雇用として雇ってもらえるのだろうかという不安もあるかもしれません。仮に再雇用となった場合の自分には、どのような仕事が回されるのか、今と同じ待遇でいられるのかなどの不安もあるでしょう。少し先の未来を考えていると、マンネリなどして時間を浪費している暇がないことに気が付きます。
研修などでも自分自身の人生設計を落ち着いて見直してもらう機会を創出し、社員一人ひとりにビジョンを描いてもらいましょう。
再雇用制度への葛藤
再雇用されたい人もいれば、定年後にはのんびりと穏やかに暮らしたいと考えている人もいることでしょう。しかし、自分の意志だけで選択できない場合もあります。年金の受給年齢や自分の貯蓄と相談して、働かなくてはいけないとなった場合、本当は仕事から離れたいけど、離れられない場合があります。
このような葛藤の末に再雇用を選択した人がいる場合、周囲はどのようなことに気を付けるのがよいのでしょうか。
社会制度の問題が再雇用制度を選択させることも
再雇用となった人がどのような理由でそうなったかは分からないでしょう。社会制度と密接に関わっていることも否めません。
一般の会社員の方であれば厚生年金制度によって保険料を納めています。厚生年金の受給開始年齢は65歳以上となります。75歳までの受け取りを繰り越すこともでき、受け取るまでの期間を今までの会社で勤務しようと考える人も多いです。
また、家族や周囲の人にそのように提言されるケースもあります。一概に本人の意志だけで仕事を辞めるか続けるかの選択ができていない現状もあります。
葛藤からの再雇用
葛藤の末、再雇用という選択を選んだ人に対して、職場の人が「居場所を与えてあげている」などといった空気を出してしまうことは禁物です。その空気を本人が感じ取ってしまっては、年齢を重ねて健康状態も若い時ほど優れていない人にとってはストレスにもなりかねません。
職場での役職は違ったとしても、一緒に仕事をする仲間として歓迎する姿勢が周囲には求められてきます。今までの功労にはしっかりと感謝をし、コミュニケーションをとることが重要でしょう。
会社を辞めるか・続けるかという葛藤をした人の気持ちを汲んであげることが大切です。再雇用によって勤務を続けると決めた側にも覚悟が必要です。周囲がどのような目で自分を見てくるのか分からないという不安もあるかもしれませんが、会社は組織です。かつての部下が自分の上司になるということも考えられます。働くということは覚悟を決めるということにもなります。どのような人間関係を築けるかは今までの職場での自分自身の振る舞い方や周囲からの評価も影響してくるかもしれません。
再雇用による上司と部下の逆転
再雇用による職場環境の最も大きな変化や心理的な壁は上司と部下の逆転現象ではないでしょうか。年齢は違っても組織で仕事をする上では上下関係は絶対的なものでしょう。
かつて上司であった人が自分の部下になるということは再雇用制度に限った話ではありません。周囲からの消化によって昇進が早い若手社員もいるでしょう。そのようなときに上司と部下は何に気を付けて仕事上のコミュニケーションなどをとればよいのでしょうか。ここでは、新しく上司になった人、新しく部下になった人が気を付けたい心構えについて書いていきます。
新しい上司が気を付けるべきこと
かつての上司が自分の部下になっているのですから、やりにくいことは十分に承知しています。ただし、組織構造上あなたの方が役職が上であることは間違いないのですから、それ相応に振る舞うことが求められます。
当然ですが、威張れというのではありません。実際に上司よりも仕事ができる部下はいます。責任を取るのが自分であるのであれば、上司であるあなたが最終的に決定をするべきです。そのことは年齢に関係なく役職における責任の重さの違いであるということも理解してもらいましょう。
毅然とした態度をとることも時には重要です。
新しい部下が気を付けるべきこと
部下とはいっても、長年会社に勤めてきて、仕事もできるので、プライドが高いということは当然あっても良いと思いますし、仕事においては一定のプライドも持つべきです。しかし、組織の中で円滑に仕事を進める上で、コミュニケーションや人間関係を円滑にしておくことが大切であるということはベテランであればあるほど、分かっているはずです。年下の上司に対して「上司だと思ってはいない」とか、「自分の方が長く仕事をやってきているのだから自分のやり方があっている」というような言動はNGです。
直接言わなくても態度にも出さないように気を付けましょう。ある程度のプライドを捨てることも心がけてみましょう。提案をする際にも上から目線ではなく、下から目線くらいの気持ちが丁度良いです。部下に上司としての振る舞い方を自分が部下役となって教えてあげるぐらいの立ち位置がよいかもしれません。
再雇用制度の注意事項
再雇用精度の利用には企業側にも気を付けなくてはならない要素がいくつかあります。ここでは、過去に裁判にまで発展しそうになった、あるいは発展してしまった内容に関する注意事項について書いてあります。
労働条件に関する注意
再雇用制度は一度退職という形をとってからの雇用です。したがって、退職時と同じ雇用形態で雇う義務は企業側にはありません。例えば、正社員で働いてきた人を再雇用制度によって雇用する場合に、契約社員やアルバイトという形式で雇用することが可能です。したがって、最低賃金などにおいても、その雇用形態によって異なります。しかしながら、職種に関しては退職時とまったく異なる職種で雇用することは認められていません。今まではプログラミングの仕事を現場最前線で行ってきた人が会社の経理に回されるというようなことは認められていないということです。職種の変更に関する問題は、すでに過去の裁判で違憲という判決が下されています。
賃金に関する注意
賃金も再雇用制度によって雇用される形態にもよりますし、使用者と労働者の間での相談となりますが、多くの場合は定年時の給与の50%〜70%の間で設定されているところが多いようです。
ただし、地域によって最低賃金は異なっており、それを下回ることは再雇用であっても許されていない点には注意する必要があります。
有給休暇や手当に関する注意
有給休暇についてはリセットされると思われている担当者の方もいるようですが、実際には違います。確かに再雇用制度は一度退職をしてから再度労使契約を結ぶことになりますが、労働契約自体はそのまま契約されていたとみなされます。所定労働日数の変更があれば、有給休暇の付与日数も異なります。年度の途中で再雇用契約を結んだ場合には、結ぶ前の有給付与日数がしばらく適用され、年度の切り替わりとともに付与日数も所定労働日数に応じたものに変更となります。
年間に5日以上の有給取得義務などは守らなくてはいけません。
また、交通費や家族手当など、一般正社員への手当なども正当な理由なく支給していない場合には違法となる点にも注意が必要です。
契約期間に関する注意
基本的には1年ごとに契約を更新する嘱託社員になっていますが、5年以上繰り返し契約の更新がある場合には、厚生労働省が義務化している「無期転換ルール」を適用することになります。
ただし、労働者が高齢者という事実もありますので、企業側が雇用計画管理を作成し、管轄する労働局の指導を受ける場合には特例となります。ただし、この特例の適用は同じ会社で再雇用制度によって勤務を続ける場合であって、他の会社で勤務をする場合には適用されずに無期転換ルールを採用しなくてはいけません。
まとめ:再雇用制度についての理解を深めることが大切
会社で長く勤めていると上司と部下の入れ替わりを経験した方もいるかもしれません。会社における組織上の役職・階級が何を意味するのかということを組織運営の観点から適切に理解をしてもらうことも重要です。
同時に日本の社会制度からも再雇用制度の推進が成されています。感情や直感的に理解をするのではなく、客観的に正しい理解が企業、職場には求められています。
Next HUB株式会社が提供するHUB onは組織運営の観点から重要な社会制度についての理解を深める研修も行っています。
ただ何となく知っているのではなく、原理原則に基づいた理解をすることによって、効率の良い仕事ができる組織力と発展していきます。
詳しくはこちらご参照ください。